西ノ島

◎島の将来ビジョン

失敗できる島。
~挑戦を支え、未来を醸成する島。西ノ島~

◎ビジョン実現のためのプロジェクト案

郷土食伝承プロジェクト

各種実証実験プロジェクト

島名 西ノ島(島根県、西ノ島町)
人口
(平成29年4月1日時点)
2,925人
位置 本町は、島根半島から北東へ約65km、日本海に浮かぶ隠岐諸島のうち島前地区に位置し、町名と同じ「西ノ島」一島で一町を形成しています。
面積 55.96㎢
地勢 火山島であったことから、高低起伏が激しく、島の東西を走る200mから300mの山脈により、内海側と外海側とに分かれています。
内海側は、中ノ島(海士町)、知夫里島(知夫村)と相対して、3島に囲まれた広々とした内海湾を抱き、海岸は屈曲に富んで天然の良港に恵まれ、14の集落が点在しています。
外海に面する部分は、西北岸に1つの集落がある外は、延々37km、海蝕断崖の連続で、海岸には奇岩怪礁が男性的な景観を呈し、特に国賀海岸は隠岐島の観光の代表的景観として知られています。
気候 対馬暖流の影響を受けて、日間気温差は比較的少なく、年間平均気温は15.0度と比較的温暖で降水量は年間総雨量1,190ミリとなっています。
冬期は北西の季節風が強くなりますが、200~300mの山脈を背に内湾に面する大部分の集落はしのぎやすくなっています。
産業 西ノ島の基幹産業は、漁業・畜産・観光です。
(水産業)
 漁業の種類としては、まき網漁業、一本釣り、刺し網、養殖、採介藻などです。
(畜産)
 島の大部分が町営の放牧場(公共牧野)であり、放牧を中心とした「低コスト・省力経営」が可能です。
(観光)
 隠岐ユネスコ世界ジオパークへの認定、フランスの旅行ガイドブック『ブルーガイド』での三ツ星認定等、隠岐に対する世界からの関心が急速に高まっている。インバウンドに対応するまちづくりの推進し、観光を起爆剤とする産業・雇用の活性化を図っています。
コーディネーターレポート
西ノ島でつくる、人生の学び舍。素朴な島を舞台にした、本質に迫る教育。
小山 亜理沙さん

島根県隠岐諸島にある「西ノ島」で、西ノ島町教育魅力化コーディネーターとして働く小山亜理沙(こやまありさ・29歳)さん。プライベートでは「西ノ島ホイスコーレ」という体験や対話を重んじる教育プログラムも提供しています。千葉で生まれた小山さんが、西ノ島で感じることとは。お話をうかがいました。

ー西ノ島との出会いを教えてください

西ノ島に移住したのは、教師になって4年目の27歳の時です。移住する前は、千葉県の私立校で生物の教師をしていました。昔から環境問題に興味があり、教師として子どもたちに環境や自然に関することを伝えたいと考えていたんです。

ただ、私自身、都会に身を置き、消費ばかりの生活を送っていたので、矛盾も感じていました。個人的に、自分が体験したことしか人に教えられないという信条があり、自然や環境のことを教えるためには、自然の中で暮らした方がいいのではないかと思っていました。

そんな時、隠岐諸島の島前地域にある「島根県立隠岐島前高等学校(以下、隠岐島前高校)」の存在を知りました。隠岐諸島は離島なので、大自然に囲まれています。自分が求めていたものがあると直観的に感じました。それは、自然環境の話だけではありません。隠岐島前高校では生徒一人ひとりの自己実現を後押しするような教育を行っていて、その背景にある教育ビジョンに共感しました。また、人口が2000〜3000人程度の離島であり、自分たちの生活と行政の距離が近いことも魅力に感じました。

もう、一目惚れのような感じでしたね。すぐに隠岐島前教育魅力化プロジェクトの担当者に連絡してみると、たまたま隠岐島前高校が全国の教員を募集していました。タイミングが良かったんです。移住というほどの重い決断ではなく、ワークキャリアにおける修業というような感覚で、隠岐島前高校で教師をすることに決めました。

隠岐島前高校のある海士町に住むと思っていましたが、赴任の直前に来た書類で、私が住むのは隣の西ノ島だと知りました。それが西ノ島に来たきっかけです。WEBサイトを見ても西ノ島の情報は少なくて、「一体どんな場所なんだろう?」と思いましたね。

ー西ノ島に来て、どのような印象を受けましたか

西ノ島にはじめてきたとき、不思議と安心感がありました。また、もう少しさびれていると思っていたので、別府港の綺麗さに驚きましたね。最初からイメージは良かったです。休みの日は西ノ島をめぐって、お気に入りの場所を増やして行きました。

夫に島で働きたいと伝えたときは、一切反対されませんでした。「面白そうだね」と言われて夫婦会議は終わり。夫はIT系の仕事をしていたので、「島×IT」でできることを色々やっています。

職場と住む場所が分かれていたのは、私にとっては良かったと思います。私にとっての海士町は仕事場であり、バリバリ働くというイメージです。それに対して、西ノ島は土日にプライベートを過ごすゆったりとした島。職場と同じ島に住んでいたらずるずる残業していたかもしれませんが、船の時間があるので、仕事に区切りをつけられました。周りからは、船通勤している先生なんて、全国に何人もいないとも言われました(笑)

島に来た頃は、どれくらい暮らすかは決めていませんでしたが、一軒家に引っ越して地域のコミュニティに入るようになってからは、長くいたいと思うようになりました。コミュニティに属してみて、地域と関わる良さを知りました。

また、同じ頃に子どもが生まれたことも影響しています。都会にいたら、保活をするとか、面倒を見るのに夫と揉めるとかありますし、電車に乗るのも一苦労。だけど、島にいたら、みんなで子どもを育てるという感覚があるんです。子育てをする上で、最高な環境だと思います。

すぐに、西ノ島は私にとって「帰ってくる場所」になりました。実家に帰っているときも、気づけば「西ノ島に帰りたいな」と思っているんです。港に戻ってくると、癒やされるというよりも「帰ってきた」という安心感があって、地に足がつく感覚があります。

ーその後、仕事の中心も西ノ島に移すまでにどんな経緯があったのでしょうか

まず、西ノ島に来た2年目、隠岐島前高校の教師から、高校の魅力化コーディネーターに仕事を変えました。元々、教育に関わる方法は教師になることだけではないと思っていたのですが、たまたま魅力化コーディネーターの人員が増えることになって。教師だったら、他のタイミング、他の場所でもできる。でも、隠岐島前高校のコーディネーターは今ここでしかできない。そう思って仕事を変えてみることにしました。

しかし、個人で仕事を進めることが多い教員と、チームで仕事をするコーディネーターに必要とされるスキルは違いが大きく、自信が揺らいだり、苦労する場面もありました。個人レベルで失敗してしまったときは、チームメンバーにフォローしてもらいながら仕事を進めていました。

そんなとき、デンマークにある「フォルケホイスコーレ」を知りました。隠岐での仕事仲間が、教えてくれたんですよね。

フォルケホイスコーレは、デンマークの教育機関を参考にした教育プログラムです。デンマークでは、高校を卒業した後ストレートに大学に行く人が少なく、あえて自分を見つめ直す時間を経て進路を決めるのが一般的です。その立ち止まるための教育機関としてフォルケホイスコーレが存在します。全寮制で、対話を中心とした授業を行い、自分を見つめ直すのです。

すごく面白そうな仕組みなので、自分自信が生徒として体験する必要を感じていました。そう思っていたとき、ホイスコーレを紹介してくれた方が、日本人向けに1週間の体験プログラムを組んでくれたんです。ホイスコーレ自体に関心がありましたし、新しい仕事をする上で自分自身を見つめ直したいという気持ちもあって、参加することに決めました。

1週間と短い時間でしたが、たくさんの学びがありましたね。コミュニケーションの基本は「聞くこと」であることや、大人にも楽しむ気持ちが大切なこと、それぞれの人が得意なことの先に仕事が生まれることなど、多くのことに気づけました。

何よりも、デンマークに行ったことで、自分の中にある西ノ島への強い想いに気づきました。1週間の間に、「西ノ島」ってしょっちゅう口に出していたんです。

西ノ島のためになる仕事をしたい。西ノ島を、もっと多くの人に知ってもらいたい。そんな気持ちがあることに気づきました。隠岐島前高校のキャリア教育の授業では、仕事を選ぶだけでなく、仕事を新たに創ることを勧めていたので、私も自分で創ってみようと思いました。

それで始めたのが、「西ノ島ホイスコーレ」です。フォルケホイスコーレの簡易版を西ノ島で行えば、西ノ島とフォルケホイスコーレ両方の良さを多くの人に知ってもらうことができます。自然の良さと人の良さを活かせば「西ノ島でもできるんじゃないか」と地元の方から言われたことで、自分の中で火がついたんです。

また、自分にできることを活かして、西ノ島で学習支援をしたいという想いが強くなりました。しかし私塾の場合、児童生徒の人数に限りがあり、学校行事や部活動の合間に運営するのは、難しいことだとすぐに予想できました。

そんなとき西ノ島で、町営塾の運営を含めた「西ノ島町教育魅力化コーディネーター」の募集がありました。難しい仕事だと思いましたが、周りの人が応援してくれたこともあって、思い切って挑戦することにしたんです。

ー今やっている仕事や、その先にある西ノ島の教育ビジョンを教えてください

西ノ島町教育魅力化コーディネーターとしては、主に2つのことに力を入れています。1つは町営塾。学び方も含めた学習支援をしていきたいと考えています。もう1つは、小学生・中学生の親子を対象にした西ノ島しまっこ留学。しごと・くらし体験では、学校だけでなく、島での仕事や暮らし全体についてご案内しています。

プライベートで実施した西ノ島ホイスコーレは、多くの方々の協力のもと2017年7月に第1回を開催することができました。西ノ島ホイスコーレが実施できたのは、地域の教育力があってこそ。とびきりの自然と、西ノ島で暮らす方々の魅力をプログラムに散りばめました。今回は1週間のプログラムを準備し、参加者を島外からも募りました。日本人がデンマークに行くような感覚を、本土から離島に来ることで持ってもらえると思ったんです。島内の人と島外の人、どちらにとっても価値のあるものを作っていきたいです。西ノ島ホイスコーレでは、偉い人が講演に来るわけではなくて、暮らしの中で人や自分が思っていることを、対話を通じて感じ合います。大切なものがちゃんと残っている島だから、フォルケホイスコーレを実施できるんだなと感じます。

西ノ島は「本質に迫れる場」であると感じています。暮らしは派手ではありませんが、心豊かに暮らす上で本当に必要なものが、ちゃんとある。外から何か新しいものを持ち込んでとってつけるのではなくて、西ノ島らしさにじっくり向き合うことで、この島ならではの教育が描かれるのではと考えています。

多くの方に西ノ島を知っていただき、足を運んでいただけたら嬉しいです。